「あー、もう!!」

むすっとしながら口に運ぶのはから揚げ

サクサクの衣とちょうどいい醤油の香ばしい香り

「どうしたの、しるふ。ご機嫌ななめじゃない」

向かい側に座るのは飯田莉彩

焼き魚定職をつまんでいる

「黒崎先生が人のことばかにするからさ」

黒崎先生の方がよっぽど鈍感じゃない

なのに自分のことは棚に上げて気をつけろですって?

私はいくつよ?

「ああ、黒崎先生ね」

あれはきっと鈍いというより鈍くしているんじゃないかと莉彩は思っている

でないといろいろ説明がつかない

「ああ、もう。本当に何考えてるかわからないなー」

指導医の時もそうだったけど

付き合うようになって一緒にいる時間が増えた分そう思う機会も増えた

うー

唸りながらから揚げ食べる女っていないわよ

そう思いながら

「しるふって本当に、」

黒崎先生が好きなのね

何ともなしにそう口にしていた