「黒崎先生は何か動物、飼ったことある?」

少し舌足らずなかわいらしい声で無邪気な顔を向けてくるのは、今海斗が担当している6歳の男の子だ

実は彼ここの常連

喘息がひどくてよく発作を起こしてはERに運び込まれてくる

初めて運び込まれたときに担当したのが海斗だったのでそれ以来ずっと海斗が担当しているのだ

すでに看護師やほかの医師とも顔見知りでみんなから「慶ちゃん」と呼ば親しまれている

といっても海斗としては毎回毎回発作を起こして運ばれてくるのであまり喜べる心境ではない

喘息を落ち着けて学校帰りに顔を出してくれるのならとてもうれしい

早くそんな日が来ることを願う日々である

「動物?ああ、ボーダーコリー2匹と猫が一匹、実家にいる」

ちなみにこの猫は黒崎病院に捨てられていたのを信次が引き取って長い

高校時代、海斗の部屋のベットの上で寝転がっていたのをよく覚えている

気が付くと腹の上で寝ていて、そりゃ夢見も悪くなるさと

親友・瀬戸弘毅によく笑われたものだ

「いいなー、僕も犬か猫飼いたいなー」

出来れば犬がいいなー、コリーとかゴールデンレトリーバーとか大型犬がいいなー

その願いをかなえるには

「まず毎日薬飲まないとな」

そう言って開いていたカルテを閉じた