お湯が沸いた音がして背を向けた海斗を眺めながら思い出すのは

「だから、口に出さないと心配なほど大切なんでしょう、しるふのことが」

なんて愚痴を聞いてくれた莉彩の諭すような声

わかってる

面白くないと思うほど、ホント過保護と思うほど

それはきっと海斗の愛情の裏返し

3年も経てば、それは日常と化すほどいつものことで

下手すると見落としてしまいそうなほど小さな気遣い

「黒崎先生が怖がってるのはしるふが自分から離れていくことじゃないよ。あんたがそこいらの男に傷つけられること」

じゃないとあんな小もないやつら相手にしないわよ

相手、天下の黒崎病院跡取り息子よ?

誰が敵うってのよ

莉彩がそう口にした時、すごく納得した自分がいた

ああ、だから

自分は海斗で、やっぱり海斗からは離れられないのだと痛感したのは

まだ若かったあの頃