「ねえ、海斗」

場所は海斗のマンション・リビング

ふと呼ばれた名前

これでもそんなに短気な方でないと思っている海斗である

「どうした」

問いかければ視線の交わるブラウンの瞳

「海斗と莉彩って、よく、あれは信用しない方がいい男、とかっていうじゃない。どうすればわかるのかなーって思って」

今日のサラリーマンも私にしたら普通の患者だし

「別にあのサラリーマン自身がどうのとは言ってない」

危険だと海斗の直感が告げていたのは、しるふに対する小さくも確かな好意

「だから、それってなんでわかるの」

お前、どんだけ鈍感なんだよ

紅茶を入れていた海斗の眉は、しるふの質問に自然に寄る

「指名されたけどさ、それって普通じゃない?治らない風邪だったらさ前に診てもらった人に診てもらいたいって思わない?」

だからどうしたって普通の患者なんだもん

自分でもふと瞳が細まった自覚があった

流れる沈黙

海斗の機嫌が少しマイナスに傾いたくらいでは動じなくなったしるふである