「位置について…よーい…」


──パンッ



遙が走り出した瞬間、やんでいた風が吹き始めるような感じがした。




彼こそが、本当の風…。



──ピッ



「今週の記録。

日向遙、100m…0,02秒上がり。」



上がってる。


前よりも、たった0,02秒でも。



その細かい時間さえもが、走る選手にとっては大きな時間。



「っし、上がった!!」



ニッと満面の笑みを浮かべる遙。