懐かしい街にもアパートにも、特に変わりはなかった。

周辺を嗅ぎ回られている気配も 建物に侵入されて荒らされた様子もない。
近い内にねぐらを変えるのが無難だろうが、まだしばらくは使い物になる。

窓を開けて換気をして。
地下の射撃場に降りて。
腕が落ちていないコトを確認して。

肉厚でジューシーなハンバーガーを堪能して。
馴染みのバーで、強めの酒を堪能して。

セックスシンボルの申し子のようなグラマラス美女に声を掛けられて。
濃密な夜を堪能して。



なんだか、猛烈な虚しさに襲われて。
しばらく女はいらねぇな、なんて賢者化して‥‥‥

色々な物資(主に弾)を調達して。
溜まりに溜まった依頼の中から なるべく派手で目立ちそうな数件をサクっとこなして。

『ブラッディマリー引退説及び死亡説』を払拭して。

うん、順調。
一年間のブランクなど、微塵も感じない。

まるで、ずっと変わらずこんな生活をしていたかのように。

休暇など夢だったかのように。


(夢だったのカモなー…)


ハンバーガー大国視察旅行を終えたマリーは、ボンヤリとそんなコトを考えながら母国の空港に降り立った。

さぁ、夢の終わりを始めよう。