「ナニ笑ってるの?
可笑しな人ね。」


優雅とも言える仕草でタバコに火を点けながら、女は笑った。

毛先だけ緩く巻かれた黒髪。
ブランド物と思われる、アイボリーのスーツ。
スーツと同じ色合いのピンヒール。

黒い革張りのソファーにゆったりと腰掛けて微笑む女は、お茶の時間を楽しんでいるだけのセレブ女性に見える。

ローテーブルに置いてあるのが ティーカップではなく拳銃であることを除けば。


「どうして?とか。
どういうコト?とか。
何か聞いてくれないの?」


女はゆっくりとした動作で足を組みながら、床に転がったままのアンジェラに問い掛けた。

アンジェラも後ろ手に縛られたまま、ゆっくりと身を起こす。


「んー… 別に。
たぶん、わかってるし。」


「あらあら。
安藤くんのキモチを取り戻したくて、こんなコトしたワケじゃないわよ?」


「うん。
アナタは、今度こそ俺を殺すンだ。」


女の笑みが消える。

アンジェラの笑みも消える。


「アナタのご主人が殺された日 俺との約束の場所にアナタが来なかったコトを、喋られるとマズいから。」