マリーがマンションに戻ったのは、翌日の明け方近くだった。
思いの外お早いお帰りで。
首尾は上々?
なーんて聞くだけ野暮というもの。
彼は『ブラッディマリー』なのだから。
もうあの男は、薬物依存に苦しむことはない。
犯罪に手を染めることもない。
二度と、菜々の前に現れることも…
シャワーを浴びる前に菜々の様子を見ようとしたマリーがリビングのドアを開けると、お目当ての人はソコにいた。
ブラインドを開けた窓際に佇んで、目覚める寸前の藍色の街を見下ろしていた。
「お帰りなさい。」
マリーに気づいた菜々が、身体ごと振り返って微笑んだ。
「…アンジーは?」
「ずっと私についててくれたみたいで…
今、私の部屋で眠ってマス。」
えー…
寝ちゃったの?
『任せとけ』
とか言ってたクセに、頼りになンねーな。
ま、しょーがねぇか。
アイツも、精神的にキツかっただろーし。
菜々も大丈夫そうだし、一件落着。
めでたし、めでたし…