ドンドンっ


「スイマセーン。」


本気で押し入ろうと思えば全く意味を成さなくなるような、朽ちかけたドアが叩かれた。

だが部屋の住人である男は、動こうとしない。

どうせナンカの集金だ。
払う金なんかねぇよ。
コッチが貰いてぇくらいだよ。

胸の内で毒づきながら、手にした缶ビールを呷る。

座卓の上も畳の上もビールの空き缶だらけだが、それでもまだ呷る。

ドンドンドンっ


「スっイマセーン。」


ドアは叩かれ続けている。

いったい何の集金だ?

借金取りなら今すぐ窓から逃げなければならないが、それにしては口調が丁寧すぎる。

その部屋の住人が金を借りているのは、ドアを蹴破って、土足で上がり込んでくるような金融会社ばかりなのだ。

ドンドンドンドンっ


「スっイマっセーン!」


ますますけたたましくドアが叩かれる。

借金取りじゃねぇなら、追い返してしまえ。

住人はドスの利いた声を張り上げた。


「うるせぇ!! 帰れ!!」