そんなに都合よく距離が縮まったり、ナニカが芽生えたりしねぇって。
胸キュンハプニングも起きねぇって。
恋愛小説じゃねぇンだから。
マリーと菜々は、いつも通りすごした。
高圧スプレーガンに振り回されて、菜々が踊ったり。
明後日の方向に噴射される水から逃げながら、マリーが笑ったり。
濡れた髪を掻き上げるマリーの仕草に、菜々が頬を染めて見惚れたり。
その焦がれるような熱い眼差しに、マリーが狼狽えて硬直したり。
ラーメンの湯気で完全に曇ったマリーのサングラスから目を逸らすように俯いた菜々が、必死で笑いを噛み殺したり。
その隙に、マリーが菜々のどんぶりからチャーシューを奪ったり。
『このトンネル、幽霊出んゾ』
なんて言われた菜々が、楳○かずおの漫画の人になったり。
そんな菜々を見てマリーが爆笑したせいで、車が反対車線に飛び込みそうになったり。
海に溶けるように沈んでいく夕日を見て、感極まった菜々が涙ぐんだり。
慌てたマリーが、飴を買いにコンビニにダッシュしたり…
…
うん…
いつも通り…
いつも、案外イイカンジなンだネ、君ら。