警察の追跡は躱せても、俺の目は誤魔化せねぇよ?
言ったでショ?
逃がさねぇって。
焦げ人間の依頼を受けてから数日後。
マリーは、捜査機関が未だに探し倦ねている殺人鬼の巣に辿り着いていた。
確かに上手い隠れ家だ。
敷地が広いため悲鳴も物音も漏れることはないだろうし、被害者の搬入も死体の搬出も、トラックの荷台に藁などと積んでしまえば人目につくことはない。
これならまだ当分、犯行を続けることが可能だろう。
(俺のターゲットになったのが運の尽きだケド。)
満天の星空の下、いかにも農家らしい古い木造の家屋の前にポリタンクを持ってやってきたマリーは、唇の左端を持ち上げて笑った。
派手に音を立てて玄関扉を蹴破ってみるが、反応はない。
やっぱ地下デスカ。
ソーデスカ。
セオリー通りすぎンだろ。
住人に咎められないのをいいことにマリーが遠慮なく家中を見て回ると、やはりセオリー通りの鉄の扉が、セオリー通り二階へ通じる階段の下にあった。
扉の鍵は、地下からは開閉できないものの部屋からは出入り自由の閂タイプで、今は完全に開いた状態。
不用心だなぁ…
そんなにこの隠れ家に自信あンの?
それともお楽しみに夢中で、そこまで気が回らない?