ゴキブリは諦めたものの、随分遅い帰宅になってしまった。
本当はそんなコト思う必要もないはずなのだが、なんとなく後ろめたい気分で静かに鍵を開ける。
うん。
真っ暗。
このままこっそり部屋に入って寝てしまおう。
なんだろな。
呑んで午前様になったオトーサンて、こんなに罪悪感を感じるモンなんかな‥‥‥
「お帰りなさい。」
不意に暗闇の中から声がした。
朝帰りの罪について熟考していたため、全く気配に気づけなかったマリーが飛び上がる。
「ゴメンナサイっっっ」
声、裏返ってマスYO!
驚くマリーを見て、声を掛けた人物はもっと驚いたようだ。
「ナニカあったンですか?」
玄関の照明をつけ、焦ったように言ったのは…
菜々だ。
ナニカって…
心臓停止の危機デシタ。
「ただいま…
って、起きてたの?」
未だ派手な音を立てる胸を押さえながら、マリーが言った。