ファミレスからそう遠くはない路地の暗がりに少女の後ろ姿を見つけたマリーは、安堵の溜め息を吐いた。
別に、迷子の心配をしていたワケではない。
忘れ物を渡すため、彼女を捜していたのだ。
「おい。
コレ店に置きっパだったゾ。」
マリーは少女の背中に声を掛け大きな紙袋を差し出した。
中身は彼女の制服とスクールバッグ。
コレは失くすと困ンだろ。
だからって預かれないからネ?!
こんなモン持って帰った日にゃ変態扱い間違いナシだからネ?!
「…ありがと。」
小さく呟くものの、少女は紙袋を受け取ろうとしない。
それどころか、振り向きもしない。
マリーは頭を掻きながら身を屈め、足元に紙袋を置いた。
「じゃあな。」
別れの言葉を口にして、その場を後にしようとすると…
「はぁ?
あり得ないンだケド?!」
ハイ、怒られた。
いったい俺がナニをした。
眉根を寄せて振り返ると、コチラを向いた少女も眉根を寄せてマリーを睨んでいた。