少女から、場所の指定はなかった。
駅近くの、いわゆるそーゆー通りにあるテキトーなホテルに入っても、頭の悪そーなチンピラは現れなかった。

どうやら妹(仮)は、美人局の片棒を担いでいるワケではなさそうだ。

そして…
ひょっとしたら、本当に初めてなのかも知れない。

高慢な態度を崩さず平静を装ってはいるが、目のキョドり具合が半端ナイ。

ホテルの門を潜ってからは、そりゃもう顕著に。

笑わせンなよ。

てか、泣きたくなるよ。
俺が。


「とりあえず、座れや。」


普通のシティホテルではあり得ないなんともファンシーな壁紙に囲まれた一室で、マリーはドスンとベッドに腰を下ろしながら言った。

だが少女は、入り口に突っ立ったまま動かない。

大丈夫だから。
食わねぇから。

捕食不可な間柄だから。


「おまえ、家出娘なの?
家族は?」


「…
そんなコト言う必要あンの?」


マリーの問い掛けに、少女は小声ながらも傲然と言い放つ。