ハリスが任務を受けると答えた翌日、彼は皇国騎士学校の軍事執務室にいた。
彼も二年ほど前までここに通っていたのだが、少し来ないうちに様子はかなり変わっていた。
彼を呼び出したのは、かつての師であるレオドルだ。
「今日はどんな用事ですか?」
彼がそう聞くと、レオドルは焦るなと言うように手で制した。
「まあ、顔合わせと言った所だな。今授業が終わったようだから、すぐに来ると思う」
確かに彼も終業の鐘の音を聞いた。しかし……。
「誰と顔合わせるんですか?」
「来ればわかる」
二度目の彼の問いに対する答えも、非常に端的で明快だった。
もう何の解答も得られそうにないと判断したハリスは黙り込む。
それにしてもわからなかった。てっきり例の任務に行く騎士との顔合わせかと思ったのだが。
授業中に来られないと言うことは、学校関係者だろう。教師の誰かだろうか。
その時、コンコンと扉をノックする音がした。
「どうぞ」
レオドルが答えると、扉が開いて二人の人間が入ってきた。
彼らは二人そろって制服に身を包んでおり、一人は黒髪、一人は茶髪だ。
(学生……?)
予期してなかった事にハリスは戸惑う。そして少年らもまた、ハリスをしげしげと見つめていた。
「……さて、全員そろったようだな。君たちには先日、私より護衛の任務を受けてもらった。ここにいる三人がそのメンバーだ」
レオドル以外の全員の顔に驚きの色が浮かんだ。
「知り合いでない者もいるだろうが、いずれも私が見込んだ才能のある者たちだ。協力して任務にあたってほしい」
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