「──南門、異常なし」
「南東門、異常なし」
「東門、異常なし」
各部の報告を厳しい顔で聞いていたシラヌス少佐は、全てが終わるとひときわ大きな声で言った。
「午後10時現在、全てにおいて異常なし!!今後も誠意をもって警護すべし」
騎士たちも一斉に答えた。
「はっ!!」
その中には、皇国騎士養成学校の学生であるイグナスの姿も見えた。
ここはホールの外を警護する騎士たちの詰所である。
ちなみに今は、一時間ごとに行われる、各部の報告をしあう時間だ。
「晩餐会の行程の半分近くが過ぎた。異変は見当たらないが、いつ何が起こるとも限らない。各々、いつ何が起きても良いよう、気を抜かずにいること。良いな!!」
「はっ!!」
彼らが警戒しているのは、最近頻発している市民の暴動だ。
冬が明けた三ヶ月前から、貴族の屋敷や皇立公園を武器を持った貧民階級の大郡が襲うようになったのだ。
イグナスらは護衛に参加していないが、一月前には晩餐会にも押し寄せている。
「わかっていると思うが、もしそのような事態になったら、第一部隊は侵入を防ぎ、第二部隊はすみやかに中の方々を避難させ、第一に合流すること」
「はっ!!」
イグナスとカルロは第二部隊に振り分けされていた。
シラヌスが熱弁をふるう、その時だった。
どぉぉぉん……
突然そのような音がごく近くでし、彼らを凄まじい衝撃波が襲った。
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