『覚えておけ。俺達を守ってくれるような奴なんていない。頼れるのは自分だけなんだよ。誰かのためなんて、そんなの幻想でしかない。皆、自分さえ良ければそれで良いんだよ。』
遠くの物音でうるさいはずなのに、その言葉は妙に真っ直ぐ彼の耳に響いた。
その目に映ったのは、燃え盛る炎を背にして立っている青年の姿。
そしてその足下には──胸元を真っ赤に染めて仰向けに転がっている、男。
『……俺もその一人だよ。だから、殺した』
どこか自嘲的に口元を歪め、青年はそう口にする。
『お前はすぐ心を開き過ぎる……。そうやって、何度良いように利用されてきた?自分が何をされたのか思い出せ』
ごうっ、と炎が吹き出して、青年の、彼の、二人の影を赤く染めた。
『これからは守ってやれない。一人で、自分のことだけ考えて生きていくんだ。誰にも心を開くな』
ぼんやりと、青年の言葉が耳に木霊した。
『……じゃあな』
ゆっくりとこちらに歩いてきた青年が、彼の真横を通り過ぎる瞬間に、小さく呟いた。