「……アルディス!!」


イグナスに手を引かれてあの木の下まで戻ってくると、その姿をみとめたオリビアはすぐさま駆け寄ってきた。


ぎゅっ、と温かいもので包まれた感覚がして、アルディスは抱き締められた事に気がついた。


走ってくるときにぱっと見えた彼女は、少し目も赤いし、顔も青くなっていた……かなり、心配をかけていたのだろう。


「オリビア……」


「アルディス、怪我はない!?」


珍しく余裕のない義姉の問いにこくりと頷くと、オリビアは、はぁぁと安心したように大きく息をついた。


おずおずとアルディスも彼女の背中に手を回し、小さく言う。


「心配かけて……ごめんなさい……」


オリビアは驚いて目を見開き、それから腕に込めていた力を抜きお互いの顔が見えるように向かい合い、ゆっくりと笑った。


「大丈夫よ、アルディス……無事で良かった……」


ちょうどその時、がさがさと音がしたので振り向くと、ハリスが帰ってくる所だった。


彼はオリビアに何かを言おうとしたが、その背後にいるアルディスに目を留めると、何かがわかったように微笑んで頷いた。


それから、オリビアが駆けてくる少し前にアルディスから手を離し、少し遠くにいたイグナスの所へ向かう。


「コヴァート、アルディス様はどこに?」


「ここから北北西の方向に行った所に、一人でいました」


一人で、と聞いて、ハリスは一瞬難しい表情をする。


「……そうか、わかった。お疲れ様」