桜が、舞う。
ひらひら、体を翻すみたいに。
降ってくる花びらに手を伸ばす。
でも、花びらは手のひらをすり抜けるように地面に落ちた。
幼い恋のように、
儚く。
桜をずっと見つめていると、
「つぼみー、おはよ!」
背後から聞こえた声に振り返る。
「あ、芹ちゃん。おはよ!」
あたし 椎名つぼみ、15歳。今日から、高校一年生。身長155センチ、眉毛の下ちょうどに切りそろえられた前髪に、黒髪のポニーテール。
この容姿のせいで、いまだに中学生に間違えられることもある。
それに比べ、芹ちゃんこと小野芹子は、身長165センチ、手足も長くスレンダーな体型。
しかも頭も良く、性格も良く、顔も可愛いと文句無しの美少女だ。
そんな芹ちゃんとは、中学のころからの付き合いで何でも話せる親友だ。
「高校って広いんだね。」
「だねぇ。あ、クラス貼り出されてるじゃん!見に行く?」
「うんっ!」
芹ちゃんと生徒玄関に向かうことにした。
でも、今日は入学式。
だから人が多いし、かなり動きにくい。
たくさんの人で賑わう中、ある人を見つけあたしは思わず立ち止まってしまった。
「つぼみ…?」