月が見えた。今日は満月。吸い込まれそうなぐらい月がいつもより大きく光っていた。
隣の大倉さんを見ると、まだ、少し気持ち悪そうだった。

『ねぇー元山。』

『はい。なんですか?』

急に大倉さんは仔猫のような声で私に話し掛けた。

『ひとつお願いがあるだけど』

『私が出来る範囲であれば、いいですよ』

『俺にぎゅーとして、頭なでて』

『えぇ?』

急にそんなことを言われて、戸惑った。