すとん、と力なく崩れ落ちた姿を見た。
蹲るようにしている彼女を、放ってはおけない。

それが、特別な感情から来るものだって、わかってる。


「……ミカ」


囁く程度の声すらも響くリビング。
その呼び声と同時に、同じ目線に落としたぼくがミカに触れると、びくっと大きく肩を震わせた。

……気付いてなかったのか。

それくらい、今は周りが見えない状態なんだということを思い知らされる。


顔を覆っていた手をそっと避けたミカが、潤ませた大きな目にぼくを映し出す。
眉間に深い皺を作り、下唇をぎゅっと噛みしめてたミカが、ぼくを見た途端に表情を変えようとするのがわかった。

無理に口角を上げて、眉尻を下げ、震えた声で言う。


「あ……はは。チハル、猫みたいだね?全然気がつかなかっ……?!」


気丈に振る舞おうとするミカを目の当たりにしてしまうと、もう頭でなにを考えるわけでもなく、勝手に体が動いてた。
そのまま両手をミカの背中にまわして、少し強引に自分へと引き寄せる。


「ちっ……チハ、ル……」
「ねぇミカ。セイジやめてぼくのとこ、きたら」