母の腕に抱かれてしなやかな音を二胡で奏でる一時が…私が唯一母を思い出す温もりと思い出だ…。
まもなく母は病に倒れた…。
しかしちょうどその時…迫り狂う戦火の餌食になり遠くまで逃げられないと悟った母は私に二胡を預けたまま1人井戸に身を投げ出した。
父は兄と幼い私を連れて遠く離れた親戚の家を転々とし今のこの家にたどり着いた。
父は兄とともに…私が嫁ぐはずだった50も年が離れた爺さんのお屋敷に用心棒として仕えた。
転々と浮き草のような生活を繰り返してきた私にとっては…唯一長く住んだ場所である事に変わりはなかった。