あの時と同じだ…。


 立ち込める砂埃に交わる乾いた血の臭い…。



 証拠が残らないのは…全て灰にされるからだ…。




 ―――今度こそは…逃がさない。




 力いっぱい踏み込んで私は宿舎の門をくぐった。



 ―――ザッ…。



 門の向こう側を塞ぐように茶色の土埃が視界を塞ぐ。



 私は首に巻いてきた布を顔の半分まで覆うと鉄の剣を構えて慎重に前に進んだ。



 逃げ惑う者とすれ違う事もないというのに…前を塞ぐ砂埃の霧はどんどん濃くなっていく…。



 鉄の剣を握る腕に一滴の汗が流れ落ち地面に滴る。




 ―――シュウウウ~。