二胡を再び片手に持ちながら私は唇を静かに噛み締めた。
あの時のような無念な想いは二度と残さない…。
この命と人生をかけても――私はあの憎き魔導師の喉笛に鉄の短刀を叩きつけてやる…………。
憎しみで心が荒れそうになるのを…わたしは押し殺して手にとった二胡の弦を弾く。
これが…最後の音色になるやもしれないと思いつつ音色を奏でた…。
―――トントン…。
扉を叩く音に遮られて私は弦の手を止めた。
「すみません…。
あいにく…満室でして相部屋をお願いしたいのですが…。」
調子よく愛想笑いを浮かべながら入ってきた宿舎の旦那は…後ろに相部屋を希望すれ旅人を引き連れて部屋に入ってきた。
「構いません………。
断る事ももちろんできたと思うが…断る理由も見つからなかったので引き受けた。