「……哲ちゃん、あたしはもう哲ちゃんに手を引っ張ってもらわなきゃ生きていけないほど小さくない」


いつから葵は、こんな強い眼差しで俺をみるようになったんだろう。


「あの日の恐怖は忘れない。だけど、あたしを助けてくれた哲ちゃんもあたしは忘れない」


葵、今どこを見てる?

俺は今どこにいる?



「あたしはもう自分の力で歩き始めるよ」


手を伸ばせば届く距離なのに
手を伸ばしても届かない。


「……このことを伝えておきたかったの…」


葵の言葉が終わり、しばらくの沈黙のあと俺は静かに口を開いた。


「……翼が好きなのか…?」