葵は一歩手前で立ち止まる。


「……久しぶり」

俺が微笑っても、葵は表情を崩そうとしない。

「そんなに警戒しないでくれよ」

「あたし、あの日の恐怖をこの先ずっと忘れないと思う……だけど」


開いた窓から風が俺たちの間を吹き抜けていった。


「哲ちゃん、あたしはもう前へ進もうと思う。哲ちゃんはずっと“そこ”にいるの…?」