「……葵」

出にくい声を絞り出して必死に名前を呼ぶが、葵は唇を噛みしめたままなかなか中に入ってこようとしない。


あたりまえだよ。

目の前にいるのは癒えない傷をつけた最低野郎なんだから。


「……来てほしい。ずっと、もう一度話したかったんだ…」

「あたしも……哲ちゃんに話さなきゃいけないことがある……」



葵は表情を崩さないまま一歩一歩を踏みしめるように中に入ってきた。