「ご、ごめんなさい。お邪魔してすみませんでしたッ」
「これ、君のでしょ?及川日向子チャン」
及川日向子[おいかわ ひなこ]
わたしの名前。
フルネームで覚えてるなんて意外だ。
差し出されたのは薄ピンク色のカバーがついている携帯電話。
ストラップは何もつけていない。
間違いなくわたしのです……
「ありがとう……」
目も合わせないでそう言って携帯を受け取ろうとした。
わたし、この人苦手なんだよ。
喋りたくないんだよ。
こんな…1対1で話すの初めてだ。
「……全ッ然感謝の気持ちが伝わってこないんだけど」