静かにドアを閉めてゆったりとした足取りで廊下を進んでいく。
ほかの教室にはチラホラまだ人がいた。
みんなもまだ帰りたくないんだろう。
校門で待っている二人のことを思い出し、歩くスピードを上げた。
卒業式前日、明日は素敵な一日になりますようにと心の中で願った。
下駄箱の扉を閉める小さな音もよく響いて聞こえる。
ローファーに履き替えて校門へと急ごうとしたそのとき、誰かに呼び止められた。
「及川さんこれから帰り?」
「うん。校門で莉乃ちゃん達が待っててくれてるんだ」
一緒に帰るの、と笑ってみせると水瀬くんも微かに笑みを浮かべてそっか、と返してくれた。