「その緊張感のないご挨拶、なんとかなりませんか?」
「えぇーっ? 緊張してなきゃいけないのーっ?」


 不服を訴える紗也に、和成は真顔で諭す。


「戦場で緊張感のない者は真っ先に命を落としますよ。ここは戦場なんです。少しは緊張感をお持ち下さい」


 紗也は黙って和成を見上げながら、ゆっくりと頬を膨らませた。

 すでに戦は始まった。
 ここでへそを曲げられて、どこかに飛び出して行かれでもしたら面倒な事になる。
 和成は一息嘆息し、少しおだててみた。


「まぁ、緊張感はありませんでしたが、先ほどのご挨拶で皆の気持ちはほぐれたでしょう」


 紗也の表情が幾分和らいだ事に安堵しつつ、和成は意地悪な笑みを浮かべて顔をのぞき込んだ。