「和成って本当に天才軍師だったのね」


 紗也が尊敬の眼差しで見つめると、和成の笑顔はいつもの不機嫌顔に戻った。


「天才ではないと昨日も申し上げましたでしょう」


 吐き捨てるようにそう言って、和成はぷいと顔を背けた。

 褒めたつもりが、なぜ機嫌を損ねたのか紗也には分からない。
 少し不服に思い、口をとがらせた紗也に、隣にいた兵士がこっそりと告げた。


「照れてるだけですよ。和成殿と塔矢殿がいるから、うちが負け知らずなのは本当ですからね」

「やっぱりそうなんだ」


 読みが当たっていた事にすっかり気をよくして、紗也はクスリと笑った。

 そんな隣でのやり取りなど眼中にない和成の頭は、すでに戦に向けられていた。