それを聞いて紗也はきょとんと首を傾げる。


「隠さなくていいの?」

「うちには隠して温存する手駒はありませんからね。部隊長たちはいつも全員参加です。昨日持久戦は無理だと言ったのはそういう事なんですよ。戦が長引いて皆が疲れてしまっては、次の戦で不利になりますからね。一般兵の数は多少増減しますが」


 紗也はこれまで戦について深く考えた事はなかった。
 毎日のように秋津島のどこかで戦が繰り広げられている事は承知している。
 けれど杉森国内はいたって平和に思える。

 それというのも、国内まで敵に攻め込まれたとか、部隊が壊滅的被害を受けたとか、一度も耳にした事がないからだ。
 たまに聞くのは塔矢の勝ち戦自慢。

 和成は大した事ではないように笑っているが、杉森のように人も財も限られた小国が、大国相手に一度も負けた事がないというのはすごい事ではないだろうか。

 そしてそれが、塔矢の言うように和成の立てた戦略のおかげだとしたら――。