『だからお前は怪我がなかったんだろう』


 そう、階段から落ちたはずなのに奇跡的に無傷だったのだ。


『お前なんか助けなきゃ、こんなことにならなかったのに』


 深いため息が聞こえ、全身に寒気が走った。
 
 隣にはまだ泣いている母と、意識が戻ったと知り担当医と看護師が駆けつけ「一日眠っていたんだよ。階段から落ちたこと覚えてる?」としか聞かされていない。


「千和ちゃん?どうかした?」

「・・・ここにいるのって、私たちだけ・・・です、よね?」

「そうだけど・・・もしかして見えないの?」


 「そうなの!?」と勢いよく訪ねてくる母に何ともないと言うが、一応、精密検査をすることになった。