「………」
私の部屋、ベッド。
手も足も、身体に異常なし。
鏡を見れば、長い髪が寝癖をつけてはねている。
いつもと変わらない朝を迎えた。
なんだ。
言い伝えに気がいってて、異変のない自分の姿に安心した。
「お父さん、おはよう」
「おはよう、さくら」
キッチンにいるお父さんに挨拶をして、そのまま居間に向かう。
「おはよう、お母さん」
仏壇で微笑む写真に話しかける。
私が生まれてすぐ、お母さんは交通事故にあったらしい。
だから、私のお母さんは写真でしか知らない。
「ねえ、お母さん。私、17才になったよ」
庭には桜が咲き誇っていた。