すがすがしい朝だった。
前の日の夜は母親からどんな学校だったか聞かれ何故か小言をグチグチ言われ、お見合いをしろと言われとても不快な気分になった。何故人は他人の事をほっとけないんだろう。まあ、確かに三十路にもなって結婚していない俺は変わっているのかもしれないけど。それなりに恋愛はしたけど、どうしても結婚する気にはなれなかった。医者の息子として金だと思われているような、テレビに出たりするような教育コメンテーターの母親がいるからミーハーで近寄って来たのか、そんな気分になってしまう。恋愛なんてめんどくさい。俺には名前しかついてこないんだから。
「んー、ふわあ。」
一人が楽なのだ。何よりも、
誰にも指図されず生きていくのが。
「おはよ。」
松原の声に振り向く。
おはよう、と頭をかきながら微笑むと相変わらずだな、と笑われた。すぐ後ろに女子生徒が立っていた。
ああ、例のコか。
キョトンとしてこちらを見ている。
茶色がかった少し長い髪の毛に、白い肌、華奢で背は少し高い方なのかな。ガリガリとゆうわけではないが短いスカートから見える足も細く長い。
「は?だれ?麻生じゃないじゃん。」
「え?」
言葉に詰まる。
「お前昨日の始業式居ただろ!何でも高野の事知らねーんだよ。」
呆れるように松原は彼女を俺の目の前に連れて来る。彼女はまだ俺をジーっと見ている。そんなに髪型がおかしいのか、顔に何かついているのか。
「へえ。この保健室の先生。松原せんせーと知り合いなの?」
「そう、高野先生だよ。俺の高校の時の同級生だよ。こいつはなあ、すげえんだぜ、高校の時サッカー部のキャプテンでプロになるんじゃないかって思ってたら本当にスカウトマンが練習見に来てたのよ。ただのスポーツ馬鹿じゃなくて成績もいつも上位。才色兼備とはこいつの事だよ。」
昔の話だろ、どうぞ。
と言って俺は彼女をソファに座らせる。
俺より彼女の方がこの保健室に慣れているくせに周りをキョロキョロしている。
「ま、俺授業はじまっから。頼むわー高野ー。」
「うす。」
ガラガラガラ、扉が閉まる。彼女と2人きりになる。話そうとしたらチャイムが鳴る。この時間がもったいない。君は受ける義務のある授業を受けていないんだ。
「佐藤ユリアさん。だよね?」
「はい。」
普通に可愛い。とゆうか美人。
さっきの松原とのやりとりを見ると普通に他の生徒とも馴染めそうだが。
「よろしくお願いします。」
「はーい。」
「コーヒー飲む?」
「いただきます。」
ちらほら話をすると愛想はないが、悪いコそうでもない。成績も授業出てない割には全然いいし、見た目は派手だが常識もある。
「ありがとうございました。」
「はい、佐藤さん、明日もよろしくね。
」
佐藤さんはニッコリ微笑み、失礼します。と言って丁寧に扉を閉める。彼女ならすぐ学級復帰できるんじゃないか。期待に胸が膨らむ。グラウンドに出ると池の中にさくらの花びらが浮かんで綺麗だった。写真を撮った。これが彼女と出会った日だ何気なく出会った俺達はこれからお互いが何よりもかけがえのない存在になってゆく。だれも知らない所で。