その日は珍しく残業。
会社を出て、駅まで歩く道のりで。
「すいません」
突然声をかけられて、ビクッと身体が飛び上がる
なんだなんだ、と声の方向を見れば――
飛び抜けた身長に、小さな、顔。
テレビでしか見たことがないんじゃないか、って程の
美しく、整った顔の――
「すいません、良かったらカットモデル、やりませんか?」
「へっ?」
お金がなくて、ずいぶん放置していた長い髪。
多少手入れなんてしなくても、髪はヘアアイロンでどうにでも誤魔化せる
「髪、切りたくない?」
にこっ、と笑った彼の笑顔につい
「――はい」
そう返事をしてしまっていた