温泉までの川沿いの道は、以前に来た時よりも濃い緑色に溢れていた。土手に並んだ桜の木はすっかり緑の葉が茂って、陽射しを跳ね返してしまいそうなほど輝いている。



この景色を海棠さんと一緒に眺めたい。



車窓を流れる緑を眺めながら温泉に着くまで、そんなことばかり考えてしまっていた。



「ほな、上がったらそこで集合な」



和田さんが休憩室を顎で指して、ひとまず解散。



こんな時、女子ひとりは寂しい。
地元のおばちゃんたちに紛れて、展望浴場の大きな窓から長閑な景色を望んだ。目線が上がると同じ緑色でも感じ方が変わるらしい。車窓から見えた緑色は迫るような勢いがあったのに、ここから見える緑色は絨毯か布団のように受け止めてくれそうに思える。



お風呂から上がったら、約束通り休憩室へと向かう。
たぶん皆よりも私の方が早いはず。和田さんたちは意外と遅い、というか男三人集まって話し込んでいるのだろう。そういうところは女性と同じなのかな。



休憩室を覗き込んで皆の姿を探していると、温泉施設の制服を着た女性が視界の端から歩み寄ってくるのが見えた。