ねぇ、あたしのこと好き…?



そう言えたらどんなに楽なことなのか。



あたしは毎日毎日辛い思いをしている。
でも、我慢しなきゃ。


嫌われたくない。
嫌われたくない。


こんな、嫉妬で醜い心をあなたに見せることなんて出来ないよ…。





「おはよー、愛梨」


朝学校に着くと下駄箱で若菜に会った。


木下若菜
私の一番の友達で、いわゆる親友である。


「おはよう」


軽く挨拶して、二人で教室に行こうとする途中で、甘ったるい女の声が聞こえて来た。



「ねぇ、宮野く〜ん、今日家行っていい〜?」

「あぁ、いいよ」


そんな会話が聞こえてくる。





見なくても、その男があたしの彼氏である宮野葵だとわかる。

まあ、女が「宮野くん」と言ってる時点で葵に間違いないのだけれど。



「…行こう、愛梨」


若菜は強引に私の腕を引っ張って教室に入って行った。






「あんな最低な奴ともう別れちゃえばいいのに!」

「あはは…」


私は笑うことしか出来ない。


いくら、葵が浮気してようが、あたしは葵が大好き。


どれだけあたしを見てくれなくても、キスの一つもしてくれなくても、【彼女】という肩書きがあるだけであたしは大丈夫。



「若菜、ありがとう」


私の為にいつもそう言ってくれる若菜には本当に感謝してる。


「もう愛梨が傷付く所、見たくないから…」





そう言って悲しげに俯いた若菜に


「あたしは大丈夫!もう慣れたし!」


わざと明るく振る舞って大丈夫というアピールをした。



「でも…」

「ほら、チャイム鳴っちゃうよ?」


何か言いたげな顔をしている若菜を無理矢理席に座らせると丁度チャイムが鳴った。


チャイムと同時に教室の後ろのドアから葵が入って来た。


葵と…女の子三人。


これもいつものこと。

そしてその女の子たちが葵と腕を組んでいるのもいつものこと。





葵と腕を組んでいる女の子の一人が私をじろっと見て来て、急いで顔を逸らした。


葵は私の方なんか一度も見ない。




私がため息をつくとそれと同時に先生が入って来て朝のHRが始まった。


私はいつものように窓から見える海を眺めていた。



私達は最初はこんなじゃなかった。

最初はもっと仲の良いカップルだったんだ。