ゴクリと喉を鳴らし、少し緊張した面持ちでローグはランタンを取り出した。


マッチを擦ってそれに火を燈すと、ボゥとオレンジ色の灯りが洞窟の入口を照らす。


入口は狭く、奥へ続く道は一本。


ローグは目でジルに語る。

入るぞ。


微かに頷くとジルはカチュアの背中に手を回し、ローグの後に続くよう促した。


離れないで。

小声で耳打ちし、背後にも注意しながら洞窟に足を踏み入れる。


その途端、ローグは行く先に赤い点のような光が天井付近に幾つもあるのを確認した。


「危ねぇ! 伏せろっ!!」


ローグが叫んだのと、それらが襲いかかってきたのはほぼ同時だった。


バサバサっという羽音が響き、ジルたちの頭を掠めて飛び交う。


ジルはカチュアの頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。


黒い靄のような大群が洞窟の外へと飛び去り、晴天の空へと散っていく。


「なんだよ、コウモリか」


舌を鳴らしながらローグが呟いた。

脅かしやがって。
内心そう毒づきながらローグはランタンを天井付近に照らした。


残っているコウモリはもういないようだ。


気を取り直して、三人は更に洞窟の奥へと歩を進めていった。