「どうしたんだよ。らしくねぇ」
ジルの動揺はローグには悟られてなかったらしい。
いつものジルらしくない。
怪訝な表情を浮かべてジルを覗き込んだ。
確かに、いつものジルなら風を感じた時点で放り出されることなく対処していただろう。
ローグのことを考え、対処が遅れたのは事実だ。
「だ、大丈夫よ。ちょっと、油断しただけ」
ジルはそう返すと、対岸に向けて吊り橋を渡っていった。
ローグの顔を見ると落ち着きがなくなる。
まったくどうしたというのだろう。
昨晩から、自分は何かおかしい。
そう、この時点でジルは忘れていた。
突風が吹く直前に感じた鋭い殺気のことを。
そんなことは既に頭の中から消えてしまっていた。
足早に吊り橋を渡るジルを、ローグは首を傾げながら後を追った。
いつもと様子がおかしい。
そう感じながらもローグはたいして考えることはしなかった。