吊り橋の中央で宙ぶらりんになってしまったジル。
自分の身を繋いでいるのは自らの右手一本だ。
ジルはその右手を握る力を強めた。
思ったより蔓が滑りやすい。
突風とジルの体重の影響を受けた吊り橋はまだ大きく揺れている。
ジルは苦痛に顔を歪めた。
右手が痺れてきている。
懸垂の要領で肘を曲げ、身体を持ち上げると、左手に持っていた荷物を橋の足場に載せた。
そして、すかさず両手で蔓を掴む。
橋の上に身を乗り出そうとしたとき、左腕が何かに掴まれ、橋の上まで引き上げられた。
「大丈夫か?」
ローグだった。
カチュアを対岸へ運び終えた後、橋の外へ放り出させたジルを見て、戻ってきたのだ。
ローグはジルを軽々と持ち上げると、橋の上に引き上げて下ろした。
「へ、平気」
ジルは自分を助けてくれたローグの手を慌てて払ってしまった。
引き上げられたとき、思いもしないほどにローグの顔に自分の顔が近づいた。
自分の思考とは関係なく胸がどきりの反応する。
そんな自分を悟られたくないが故、咄嗟に出た行動だ。
ローグは気を悪くしただろうか。