「ったく。下を見るから怖いんだよ」


軽く舌打ちをしたローグが、「しょうがねぇなぁ」と漏らしたかと思うと、言うが早いか自分の肩にカチュアを軽々と担いでしまった。


「きゃっ」


突然のことにカチュアが驚き、足をバタバタとさせた。


「少しの間だから、おとなしくしといてくれよ」


そう言われ、カチュアは担がれたままコクコクと頷いた。

まだ驚きは隠せないようだったが。



「ちょっと、ローグ。大丈夫なの?」


慌てて暴れてしまうかもしれないカチュアが心配で、ジルは声を掛けたのだが、
「大丈夫だって」と軽くローグに返されてしまった。


「ジル。これだけ頼むわ」


ローグはジルに自分の荷物を投げて寄越すと、軽い足取りで吊り橋に足をかけた。


目の前に飛んできた荷物。

それを受け取りながら、ジルは二人の様子を窺った。


一歩足を踏み入れると、その重みで吊り橋はギシリと音を立てて静かに揺れる。


壊れそうなほど繊細な音を出しつつも、吊り橋は案外丈夫にできているようだった。


渓谷の底を見ないように、両手で顔を覆い硬く目を閉じているカチュア。