ゴロゴロと手押し車を押すおじさん。

野菜が山盛りに積まれたカゴを両手に持って歩く農夫。

道端でジャンケンをして遊んでいる子供たち。


いつもと変わらないリィズ村の風景は平和そのものだ。

いつもこの風景に癒される感じがする。



「ローグ! ジル!
帰ったのか」


畦道を通り過ぎ、村落に差しかかったところで、ふと声を掛けられた。


二人がそちらを振り返ると、短髪に手拭いを巻いた男が近づいてきた。


「スコットおじさん」


ジルはその人物の顔を認めると、笑顔でその男の名前を呼んだ。


「なんだ。帰りが遅いからよ、今度こそどっかでくたばっちまってるんじゃねぇかって心配したんだぜ」


年の頃50代前半のスコットはそう言ってガハハと笑った。


口は悪いが二人の姿を見られてとても喜んでいるような、安心したような、そんな表情を浮かべている。


「縁起でもないこと言わないでくれよな」


ローグがスコットの言葉に唇を尖らせて言い返す。


「まぁまぁ、冗談だよ。そう怒るなって。
さ、疲れてんだろ? ゆっくり休むといい」


スコットはそう言うと、二人を導くように村の奥へと歩き出した。



このスコットという男は、リィズ村に唯一ある宿屋<かすみ荘>の主人だ。


最もこんな田舎にある村に訪ねてくる客は少なく、宿屋だけでは生計が立てられないため、農作業も営んでいる。


常連客であるジルとローグの旅立ちを見送り、また温かく出迎えてくれていた。