「もう、あとどのくらいかな?」


焚火の前で足を抱えるようにして座り込み、焚火の中のホイル包みを器用に小枝で返しながら、ジルは呟くように言った。


「ん? なんだって?」


どうやらローグにジルの言葉は届いてなかったらしい。


彼は自分の革アーマーの装着を終えると、焚き火を挟んでジルの向かい側に腰掛けた。


ローグは他の剣士たちが身に着けるようなガッチリとした鉄のアーマーではなく、軽いこの革のアーマーを愛用している。


しかしこのアーマー、聞くところによると魔法で強化されているらしく、強度は重い鉄アーマーと同等かそれ以上なのだとか。

剣士の防具に関して一切無頓着なジルは、一度それを聞いたっきりで以降それに対して質問などはしなかったのだが。



「リィズ村まで、あとどのくらいかな。って言ったの」


リィズ村というのは二人が旅の拠点にしている村のことだ。


都会の街とは違って森の向こうにある田舎のため、行き来するのに相当の時間がかかる。


だが、ジルは賑やかな都会の街よりものんびりとしたリィズ村の雰囲気がとても好きだった。


「森を抜けたらすぐだよ。
食ったらすぐに出発しようぜ」


穏やかに笑うローグの顔を見つめ、ジルはコクンと頷いた。