葵は入ってくるなり、俺の頬を叩いた。



ジィンとした痛みが俺を苛む。




「…なにすんだよ!?ふざけんじゃねぇよ!」





「ふざけてるのは宙夢でしょ!?」



ピシャリと言い返される。



その語調の強さに、俺は一瞬押し黙る。




「宙夢は馬鹿だよ!本当に馬鹿!!なに、辛いのは自分だけとか思ってるの!?悲劇のヒロイン気取り?」




図星をつかれて、カッと頭に血がのぼる。




「違うっ!俺の好きにして、何が悪い!?…俺は」




自分の言っていることが、小さな子供のワガママなような気がして、俺は押し黙った。





「ねぇ、宙夢…。」





葵は表情をふっと緩め、優しく微笑んだ。