目が覚めると、そこにあったはずの温もりは消えていた。
悪い予感がした。
何の根拠もないそれが殊更怖い。
ベッドの中は、もう冷え切っていて最初から誰も存在していなかったかのようだ。
彼女の姿を捉え安心したくて、急ぎ足でリビングへ続く廊下を行く。
冷たい床が足元に響く。
それすら、怖いと思った。
ドアを開ければ、そこに探していた人はいない。
あたりを見渡して、テーブルの上のそれが目に付く。
手にすると菫色の可愛らしい封筒だった。
破るようにして、封を切る。
すると中から同じように菫色の便箋が出てきた。
――――…読むまでもなかった。
ほんの2文のそれは自然に瞳に焼きついた。
『…… なんだよっ、どうしてっ。』
どうして君は何も言わずに俺の元から離れていくんだ。
それに、こんな別れ文句で俺が納得できるとでも思ってる訳。
『やめてくれ…、お願いだから。』