『ねぇ、』
縁側に彼女を招き、夜空を見上げ季節外れの花火を見ていたとき。
あまった花火を処分がてら打ち上げているそれは、10月の空にはやや映えない。
やっぱり花火は夏に限るね、と彼女に問いかければ、
「そうですか?私は藤野さんと一緒に見れればいつだって綺麗に見える。」
『……、』
そんな素直に嬉しいことを言われたらどうしていいか分からなくなる。
『その、藤野さんって止めない?』
「えっ、なんでー?」
『可愛い彼女には、名前で呼ばれたいよね。普通。』
「可愛いって…ん、どうしよ…。」
二つのことに戸惑いを隠せない彼女は思案顔になる。
『雫さんは、俺の名前知らないの?』
そこに追い討ちをかけるように言葉を投げかければ、顔を膨らませた彼女。
「知ってるに決まってるじゃないですか!」
『じゃあ、呼んで?』
勤めて優しい声音でささやけば耳元を真っ赤にしてこちらに向き直る。