『どうしたの?』
「新作、読みました!
もうね、主人公が途中で犯罪に手を染めかけたときはびっくりしたけど、最後は号泣でした。」
新作、読んだ?
その話ってまだ出版されてないはずなんだけど。
「あ、私一応双葉出版で働いていて、
だから、ちょっと融通が利いて。」
『何そのオプション、初耳だ』と驚きながら呟けば、
「だって恥ずかしかったんだもん。」と顔を赤らめられた。
「藤野さんが大好きで、出版社に就職したから。
だからね、ちょっと本人には言いにくいでしょ。」
いや、今言っちゃってるじゃん。
それで、良いのか?
「いいんです、もう友達だから。」
『なんか、嬉しいというか…』
「嬉しいというか?」
『愛しいかも…。』
言ったと同時彼女の腕を低い塀越しに掴み、引き寄せて赤い唇を自分のそれで塞いだ。
「へっ。」そんな色気の無い悲鳴を耳元で聞く。