私の家の庭にこじんまりと咲いたスターチスの花にどちらが先に水を与えられるかを競っている。




『まるで、小野小町と僧正遍照のようだね。』



「また、百夜通い(ももよがよい)の話にしたがるんですね。」





百夜、通い続けたら晴れて契りを結ぶ



そんな恋のお話を最近彼とはよく話している。




『百夜が近いよ?気持ちは決まった?』

微笑しながらこちらの様子を伺ってくる。




「あなたこそ、決まっているんでしょうね?」

私も微笑しながら彼の顔を覗き込む。



そうすると彼は困ったような顔をして私の耳元に口を当てて囁いた。





『そんな顔されると、早く君を俺のものにしたくて困るよ。』





不意打ちはずるい。
特に男慣れしていない私にとっては。



「私だって。」




『最高の殺し文句だ』




「そちらこそ。」