早起きの私は、カーディガンを羽織ながら玄関をそっと押すようにして開ける。
庭の一角に咲いている藤色がまた増えた。
ジョーロを持ってきてそっと水を与える。
スターチスと書かれたネームプレートにかかった土を手で払えば、存在が少し主張されたようだ。
花びらが受ける水の雫がまだ薄明かりの空を映し出す。
早起きの彼はそろそろ起きただろうか。
ふと、そんなことを考えると、後ろから近づく足音。
肩に乗せられた手を取り、振り向きながら立ち上がる。
「おはよう。」
『おはよう。』
少し寝癖がついた彼の髪をそっと撫でてあげる。
「今日も早いね。」
『君こそ。これでもう何回俺は負けたことか。』
「今日で98連敗よ。もう少しで3桁になりますね。」